闇のリフレイン
【21〜30】
「再会」
時計の針は一年を闇に染め
プログラムを書き換えた
秒針は小さく震え
時を巻き戻すように
あなたを連れて来た
闇に残した金色の道筋を辿るように
心臓は動き始めた
重ねた手が
もう二度と離れないように
「扉の向こう」
雨でもないのに
紅茶のカップに滴を落とす
それは 甘いだけのシロップじゃなくて
ほろ苦い過去を含んでいる
吐息が過去を吐き出して
酸味と悲しみが頬を伝う
あなたはまだ
扉の向こうで私を見てる
「吐息」
長い夜に巻かれて
あなたは 月を目指したと言う
そうすれば 辿り着けると
私は夜を目指したの
あなたは長い夜を従えて
吐息の薔薇を咲かせ
月光を歌うでしょう
だから 私は夜になるために
黒い吐息を練習したの
「からくり人形」
気がつけば
あなたが好む物ばかり揃えてた
絨毯も壁紙もスリッパの模様も
リビングには
ピアノを置くスペース
二人一緒に座ったソファーで
今 あなたが見ているのは
未来へ進むからくり時計
「掌の海」
その手で私を撫でないで
誰かを愛したその唇で
誰かを殺した優しさで
奇跡を奏でる指先は
あなた自身を救うためにあるのだから
その手で私を撫でないで
あなたという深い海で
溺れてしまいそうだから
「男の子」
並んだ本の底に
ずっと男の子を隠してた
時々 蓋を外して見つめたの
その子は愛をくれたけど
あなたは命を運んだの
水晶の夜
あなたが女の子を欲しがったから
閉じ込められた心臓は
もう誰にも止められない
「ウサギ」
広過ぎるベッドも
空白の片側も
「君がいれば寂しくないね」
とあなたが言った
そう
あなたはいつも
洗い立てのリネンのような清廉さで
ウサギを抱いて眠る
「アンコール」
あなたはその曲を弾いた
固い蕾を解くように
指先が螺旋を描く
霧の谷の向こうへ
チーフに染み込んだ赤い雨滴を
拍手の音が拭っていったけど
命は
その残響は
アンコールを渇望し
今も
私の奥で
鳴り止みそうにない
「ラビリンス」
心は地下に通じている
その暗闇に あなたがいる
静かな月光の下に
だけど
地下室は嫌いだとあなたは言うの
でも 折り畳まれた記憶を
隠して置くのに丁度いい
涙が乾くまでの間
あなたが弾くピアノを
心に灯して階段を昇る
「天秤」
指輪なんて要らないのに
何故
紙切れ1枚の信頼をあなたは望むの?
いつも傍にいる
それだけでは駄目なの?
天秤はいつも傾いてる
溢れた愛が
秤に詰まって動けなくなる
愛してる
だから 溢れる前に
カップの底の重さを消して
|